動画「蘭蝶〜縁切り〜」について

「蘭蝶(らんちょう)」とは
新内節の代表曲、「若木仇名草(わかきのあだなぐさ)」(通称:蘭蝶)は今から250年ほど前に作曲されました。
全曲演奏しますと、1時間以上かかる大曲です。
主人公の男、蘭蝶は、お宮という女房がありながら、遊女此糸と深い仲となり吉原に入り浸り。
お宮が深川で芸者勤めをして苦労して得た金まで、此糸にみんな入りあげてしまいます。
お宮は意を決して此糸を訪ね、蘭蝶と別れてくれるよう頼みます。
お宮のつらい気持ちを聞いた此糸は、蘭蝶と別れることを決意。
でも結局、蘭蝶と此糸は別れられずに心中してしまいます。

今回の映像作品では、蘭蝶と此糸のラストシーンに焦点を当てております。
時間の都合で演奏することができませんでしたが、本来の新内節の作品としましては、
「縁でこそあれ末かけて約束かため身を固め」(お宮が蘭蝶とのなれそめを此糸に語る部分)、
「四谷で初めて逢うた時、好いたらしいと思うたが、因果な縁の糸車」(此糸が蘭蝶への思いを語る部分)
といったフレーズが有名な聴かせどころです。
新内の会では、こちらが演奏回数ナンバーワン。250年たった今でも、圧倒的人気曲です。

恋は思案の外。それはいつの時代も変わりません。

歌詞

■コチラから歌詞をご覧になれます。

若木仇名草 上 〜虫尽し〜  
若木仇名草 中 〜お宮くぜつ〜  
若木仇名草 下 〜縁切り〜  (動画「蘭蝶〜縁切り〜」はこの部分です)

※原曲はまださらに長いのですが、現在演奏されている部分のみ掲載しました。

新内とは?

「新内」は、三味線音楽のジャンルの一つで、物語を音楽に乗せて語る「浄瑠璃」に分類されます。
三味線音楽の多くは歌舞伎の伴奏やBGMとして発展してきたのですが、新内は歌舞伎とは離れてお座敷で楽しむ音楽として庶民の人気を得ました。

時代劇などで時々見かける、手ぬぐいを頭に被って三味線を弾きながら歩く「新内流し」は、端的に申しますと音楽の移動販売です。
今では理解しがたい商売ですが、テレビもラジオもiPodもない時代には音楽を聴くこと自体が特別なことでした。
そうして花柳界で大流行した新内節。心中物語を多く描き、凄艶で哀切な旋律で、遊女の切ない心情を奏でてきました。
その音色や言葉からは、江戸情緒を今も感じることができます。